オンリーユー

「あなただけよ」言われて嫌な気分にはもちろんなりません。むしろそりゃーやっぱり嬉しい気分になりますよ。

 

「あなただけよ」特別な存在っぽく思わせてくれます。耳障りのいい響きですよね。なんだか強くなれる気すらします。

 

「あなただけよ」そう言われるのだとあの人が言ってました。ついつい頼みごと聞いちゃうんだよね、とはにかんでいました。

 

「あなただけよ」嘘だったからって力を貸さないことなんてありません。タイミングが合えば手を貸したりなんていくらでもします。

 

 「あなただけよ」嘘だったからってがっかりしたりはしません。そんなあなたの心持ちに居心地の悪さを感じるだけです。

 

「あなただけよ」だから手を貸せっ!と暗にプレッシャーをかけたいのが透けて見えると気持ち悪さがでます。

 

「あなただけよ」そんな理由がないと手を貸してもらえないんじゃないか?という不信感がうっとおしいんです。

 

「あなただけよ」悲劇のヒロインぶりたいのでしょうか。もういい歳ですから儚さはありませんよ、痛々しいだけです。

 

「あなただけよ」なんて、ピロートークで使えばいいんじゃないかなと思います。

サワガニ

久しぶりに沢蟹を探した。

川に沈む岩の陰をそーっと覗く。

水に振動がいかないように。

そーっと歩いて、そーっとしゃがむ。

頭を川に突っ込まないようにだけ気を付ける。

奥の方に、
水面(みなも)に、
じーっと目を向ける。

川をじーっと見ているとただの水じゃなくなる。

いろんな流れがあって、
煌めきがあって、
その回りを飛ぶ小虫がいて、
岩のかげに水ヒルが蠢いていて、
苔や草が揺れていて、
ふいに鳥の音がする。

 

そういうのをじーっと見ていると、

いろんな動きが目にはいってくる。

探しているんだし、
沢蟹を見つけるともちろん嬉しいのだけど。

いろんな動きに魅入っていると、ただただ、それだけで嬉しさがわいてくる。

もうすぐ春ですね
固くとじた冬芽たちがほころびはじめる
もう春ですね
花のつぼみがほころんでいる

もうすぐ春ですね
確定申告がおわった
もう春ですね
花見シーズンがやってくる

春の森には妖精が咲く
春の頭には小人が踊る

赤くもやがかかる桂の森
灰色にもやがかかる頭の中

涙が出るほど生に感動しながら
深呼吸と共に死ねと叫ぶ